今、ひそかに『古民家』が注目されています。古民家を指す明確な定義はありませんが、一般的には昭和の戦前くらいの時期までに建てられた民家で、その中でも特に大正時代以前に建てられた『伝統構法』による住宅を指すことが多いようです。
日本の中古住宅によくみられる『在来工法』とは違い、『伝統構法』で建てられた家は金具による接合を行わず、木の特性を活かした継手仕口加工による木組みで作られています。
また、木材も強制的に乾燥させた輸入材・合板や木質系素材などは使わず、じっくり時間をかけて乾燥させた自然の木を使用します。そのため、伝統構法で作られた家は在来工法の家に比べて優れた耐久性を持っています。確かに日本の寺院仏閣、神社などは、木造建築でも1000年の時を超えて存続している建物がたくさんあります。地震も台風も多く、湿度も高い日本の気候にあった伝統構法で作られた古民家が見直されているのも、そういった背景があるのかもしれません。
伝統構法では、木材も構造には腐食しづらい建材を、内装には木目が美しく調湿効果の高い木材を用いるなど、機能性と美意識を両立する日本の古民家は、今では所有者の高齢化や現在のライフスタイルに合わないといった理由からどんどん失われつつあります。そこでNPO法人・日本民家再生協会などが中心となり、日本の古民家再生により古き良き家々の価値の見直し、改修による再生を図る動きが生まれました。
伝統構法の古民家は、メンテナンスをきちんと行えば、100年、200年と住み続けることができる文化的な財産です。文化財として登録すると、水回りなどの改修が行えず、現在のライフスタイルに合わせることができません。そこで、文化のための保存ではなく、あえて民家として売買、改修、移築などを行い、長く住むことができる古民家再生が進められています。